海を通じて「まち」を知る(アメリカの海事博物館訪問記)
2025.05.08
2025年1月、アメリカ旅行中に「サンフランシスコ海事ビジターセンター(San Francisco Maritime’s Visitor Center)」を訪問しました。パネルやジオラマ、海にまつわる道具・資料・映像など、充実した展示の一部をご紹介しましょう。


かつて、サンフランシスコ周辺の海辺は、インディアンが漁労や狩猟を営む土地でした。彼らは、18世紀にやってきたスペインの探検隊を寛大に、敬意をもってもてなしましたが、その後、新しい移民たちが押し寄せ、土着の文化は奪われることになりました。

サンフランシスコを大きく変えたのは、ゴールドラッシュです。1848年に金が発見されると、その報せはたちまち広がり、人々が押し寄せました。1846年に人口約200人の開拓地だったこのエリアに30万人もの人々が殺到し、その半分は海路での流入だったそう。東海岸から南アメリカの先端をまわるルート、もしくは大西洋から太平洋に抜けるなど、非常に困難な航路にもかかわらず、人々は一攫千金を夢見て西海岸にやってきました。(写真下の絵は、東海岸の人々がカリフォルニアを目指した狂騒を描いた風刺画)
▼動画:サンフランシスコの街並みの変遷
浅瀬の埋め立てによって街が大きく広がったことが分かる。


サンフランシスコの沖合約50キロにある、ファラロン諸島に設置されていた灯台で、かつて使われていた第一等フレネルレンズ。付近は海流がぶつかり、海岸線も複雑で、難破する船が多かったそう。ヨーロッパ航海の経験がある船乗りたちからの要請によって灯台が建設され、レンズはパリから取り寄せました。1855年初点灯。ゴールドラッシュによって世界最大の港のひとつになったサンフランシスコの海の安全を、この灯台の光が守りました。

現在のサンフランシスコ。手前に見えるのは、元監獄島として知られるアルカトラズ島。サンフランシスコ海事ビジターセンターがあるエリアからは沖合2.4キロと、目と鼻の先にある島ですが、周辺の潮の流れが速く水温が低いことから、脱出不能の刑務所として有名でした。ちなみに、アメリカ西海岸で最初に灯台が設置されたのがこのアルカトラズ島です。

特筆すべきは、この博物館がボランティアによって運営され、入場料無料で公開されていること。サンフランシスコの人々が、海との繋がりを誇りに思い、後世につなげていこうとされていることに感銘を受けました。
サンフランシスコ海事ビジターセンター
San Francisco Maritime’s Visitor Center
https://www.nps.gov/safr/planyourvisit/the-visitor-center.htm
参考:日本にも、海にまつわる博物館が全国にあります。海を通じて「まち」をより深く知ることができます。機会があればぜひ、見学を。
https://www.kaijipr.or.jp/attractive/fisheries/museum_link.html